この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ある作家の日常
第2章 亜里紗(別居中の人妻、三十才)
五月のゴールデンウィークを過ぎた日曜日の夜、木内武志は行きつけのコンビニで買い物を終え、レジで並んでいた。
三人が待っていたので、すぐに隣のレジから、
「お待ちのお客様こちらへどうぞ。」
と、声がかかり、武志は隣のレジへ移動した。
商品を渡し、ふと、レジの女性を見ると、こちらを懐かしそうな目線で武志を見ていた。
心当たりはなかったが、気になり声をかけていた。
「あの、どこかで見たような気がするんやけど?あんたは、知らんわなぁ?」
我ながら間抜けな聞き方だと思ったが、レジの店員の瞳がキラッと光ったような気がした。
「あら、覚えててくれたん?嬉しい、あの、隆太の妹の亜里紗です。」
「えっ、隆太の!一番下の娘や。」
亜里紗と名乗った店員の顔がパアッと明るくなって、
「いやあ、嬉しい、覚えててくれたん、嬉しい、あっいけん、いけん、千二十円です。」
「あっ、ほな、これでお願い。」
お金を渡すとレシートともう一枚、紙をレジ袋の中に入れられていた。
「割引券です。一週間有るんで、また来てください。」
「わお、ありがたいわ。ほな、また。」
それだけのはずだったが、車へ戻り缶コーヒーを取り出すと白い紙が張り付いていた。
紙を剥がすと、ボールペンで走り書きがしてあった。
「なんやろ、えっ、これっ、後一時間やて?参ったな、エエやろ。」
エンジンをかけ、自宅に向かい車をはしらせた。
割引券の裏には、
「後一時間したら、電話してください。待ってます。番号は090-×××-××××」
それだけが書かれていた。
自宅に帰ると風呂に湯を張り、山本隆太の事を思い出していた。
中学の同級生で、高校も一緒で馬が合い、卒業してからも付き合いがあったが、三十才になる前にガンで亡くなっていた。
「あの娘が十五か、隆太が死んだんわ。可愛かったけど、その頃はいてたしなぁ。急になんやろ?」
軽く食事を済ませ、時間を確かめると五十分が立っていた。
少し早いと思ったが、スマホの上を指が走っていた。
「もしもし、木内やけど、亜里紗さん?」
「はい、武志さん、待ってたんです。あの、お話ししたいことがあるんです。聞いてくれますか?」
「うん、ええよ。」
「あの私、武志さんの小説のファンなんです。」
三人が待っていたので、すぐに隣のレジから、
「お待ちのお客様こちらへどうぞ。」
と、声がかかり、武志は隣のレジへ移動した。
商品を渡し、ふと、レジの女性を見ると、こちらを懐かしそうな目線で武志を見ていた。
心当たりはなかったが、気になり声をかけていた。
「あの、どこかで見たような気がするんやけど?あんたは、知らんわなぁ?」
我ながら間抜けな聞き方だと思ったが、レジの店員の瞳がキラッと光ったような気がした。
「あら、覚えててくれたん?嬉しい、あの、隆太の妹の亜里紗です。」
「えっ、隆太の!一番下の娘や。」
亜里紗と名乗った店員の顔がパアッと明るくなって、
「いやあ、嬉しい、覚えててくれたん、嬉しい、あっいけん、いけん、千二十円です。」
「あっ、ほな、これでお願い。」
お金を渡すとレシートともう一枚、紙をレジ袋の中に入れられていた。
「割引券です。一週間有るんで、また来てください。」
「わお、ありがたいわ。ほな、また。」
それだけのはずだったが、車へ戻り缶コーヒーを取り出すと白い紙が張り付いていた。
紙を剥がすと、ボールペンで走り書きがしてあった。
「なんやろ、えっ、これっ、後一時間やて?参ったな、エエやろ。」
エンジンをかけ、自宅に向かい車をはしらせた。
割引券の裏には、
「後一時間したら、電話してください。待ってます。番号は090-×××-××××」
それだけが書かれていた。
自宅に帰ると風呂に湯を張り、山本隆太の事を思い出していた。
中学の同級生で、高校も一緒で馬が合い、卒業してからも付き合いがあったが、三十才になる前にガンで亡くなっていた。
「あの娘が十五か、隆太が死んだんわ。可愛かったけど、その頃はいてたしなぁ。急になんやろ?」
軽く食事を済ませ、時間を確かめると五十分が立っていた。
少し早いと思ったが、スマホの上を指が走っていた。
「もしもし、木内やけど、亜里紗さん?」
「はい、武志さん、待ってたんです。あの、お話ししたいことがあるんです。聞いてくれますか?」
「うん、ええよ。」
「あの私、武志さんの小説のファンなんです。」