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ある作家の日常
第2章 亜里紗(別居中の人妻、三十才)
 俺のファンて、と思ったが武志は彼女の話を聞くことにした。


「あの、俺のファンて、SM小説やで!亜里紗さん、それは危ないで。」


「わかってます。武志さんは、本名で小説、書いてるでしょ。そやから、前に相談のメールだしたんです。あのとき旦那との事で悩んでたんで、相談したらすぐに私の知ってる武志さんやぁって。そう思たら、余計にファンになって、、。」


 亜里紗の言葉が途切れた。


「あぁ、そうかあ、あのハンネは確か、名前まんまやったかなぁ?それで、うまいこといったん?」


「ううん、オナニーではイクようになったけど、旦那とは無理やったんよ。今、別居中なんよ。別れよ思て。」


「あらま、それで?まさか、調教して欲しいなんてないわな。」


 武志がそう言うと、スマホの向こうで息を飲む音が聞こえた。


「調教、して欲しいんです。私、なんでもしますから、お願いします。」


 何故か声に必死さを感じて、


(どうしたんやろ、この娘は?こんなん初めてやな。どうする?確かめてみるか?)


 できるだけさりげない風に、


「調教って、俺の奴隷になるってことやで?かまへんのんやったら(かまわないなら)今夜、会えるかな?」


「はい、今夜、大丈夫です。会いたいです。だめですか?」


(うそっ!こんなうまいこと行って、エエんか?)


 飛び上がりたい衝動を、抑えながら武志の中に警戒心が働き始めた。


「かんまんよ(かまわないよ)。場所は、コンビニでエエかな?あそこなら直ぐにいけるから。」


「はい、コンビニでまってます。あの、時間は?」


 話が上手すぎると思いながら、彼は、少し意地悪を言ってみることにした。


「そんなに決心が固いんなら、そやな、下着を着けずにおいで。俺の奴隷は下着は着けさせないんでね。」


 電話の向こうで、亜里紗が大きく息を飲む音が聞こえた。


「下着、つまり、ノーパンてことですか?」


「うん、そうや。ノーパン、ノーブラや。いやなら、エエよ。」


「いえ、下着なしで行きます。ほんなら、直ぐに行きます。」


「ほんなら、十分くらいでそっちに行くわ。ほなね。」


「ほな。」


 それだけで電話が切れた。
 武志は少し考えたが、やはり直ぐに出掛けることにして、車に乗った。
 コンビニに着くと、亜里紗が待っていた。
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