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僕の大事な眼鏡さん。
第1章 誰か好きな人はいますか?
「…なんか、意外だな。好きな人とエッチできれば、それで良くない?」

「違うんだよ。」

 珍しく、安藤が真面目な顔で答える。

「俺の事をちゃんと好きで、俺も相手が好きでするセックスはちゃんと意味があるんだ。でも、今の関係はただの性欲解消。なんか、市田先輩とは高校からの付き合いで、最近レスらしい。だから、ヤれる人とヤりたい時にするんだって。」

 うわぁ。美咲先輩のイメージ変わったよ、僕。

「えっと、じゃあセフレって安藤だけじゃないんだ?」

「本人は俺だけって言ってるけど、どうだろう?合コンも、よく行ってるみたいだし。」

 今気付いたけど、完全に眠気が吹っ飛んでいる。上半身を起こし、ひとつ欠伸をする。

「…ちゃんと、告白したの?」

「一回、してるよ。一瞬で玉砕。でも、セフレならいいよって言われて、こんな関係。」

 はぁ。なんだか、月曜日からヘビーな話だな。

「なぁ、秀太はどうなんだよ。」

「あ。僕?僕は…。」

 まだ、何もない。

 一方的に好きなだけ。

「片思いって、辛いな。」

 安藤はボソッと呟く。

 僕も眼鏡さんの事好きだけど、告白する勇気はまだない。でも、好きで好きで好きすぎる。この好きな気持ちはどうしたらいいんだろう。

 だけど、断られた時の事を考えたら怖い。

 眼鏡さん。

 僕は眼鏡さんの事が好きです。

 眼鏡さんは、誰か好きな人はいますか?

「うん…片思いって、辛いね。」

「…秀太、とりあえず内緒な。」

「それはいいんだけど。ここでヤるなよ。家とか、ホテル行ってくれ。」

「あは、確かに。でも、ここでヤってる奴多いぞ。」

 また、しょうもない知識が一つ増えた。



 講義が終わり、バイト先に向かう。

 いつもと変わらない景色。ランチの喧騒の中、
カウンターに眼鏡さんがいる。

 目が合い、軽く会釈する。

「秀太、日替り三番、四番よろ。」

 店長はどんどん料理を作る。それを運び、あいた食器を下げる。それを暫く繰り返す。

 少し人がはけて、余裕が出てくる。

 眼鏡さんは相変わらず、カウンターの端で本を読んでいる。うん、今日も可愛い。

 ふっ、と眼鏡さんが顔を上げる。

 視線がバッチリ合ってしまった。

 うわ。じっと、見つめすぎた。

 眼鏡さんは少しだけ照れて、頬を赤く染めてニッコリする。
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