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【マスクド彼女・序】
第3章 一日目【彼女との戒律(ルール)】

 縦横斜めを以って、相手の石を挟み、それらを自分の色と塗り替える。単純なルールであるが故に、却ってそのゲームは奥が深い。

 正直は自ら口にするだけあり、その幾つかのコツを心得ていた。

 序盤は自分の石を無暗に増やさない、とか。四隅の角に隣接するマス目に自ら飛び込まない、とか。それだけを心掛けるだけでも、初心者同士ならばかなり優位に進められる。

 目先の利益にとらわれず自分の石の数を少なく抑えれば、相手は打つ場所に窮することになるのだ。要は相手の打つ手をコントロールすることが肝要。そうなってしまえば、その時点でほとんど勝ちは見える。後は対戦を重ね中盤、終盤の定石を理解すれば、更に勝率は上がろう。

 経験は小学生の時に、同級生たちと遊んだ程度。それでも正直には、ほとんど負けた覚えがなかった。

 そんな感じで、余裕すらを携えゲームを勧め――中盤。


「うっ……」


 先に手を止めたのは、正直の方だった。それを見て――


 ニイ……。


 マスクの口元が、微かにその口角を上げている。

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