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【マスクド彼女・序】
第3章 一日目【彼女との戒律(ルール)】
 その結果――。


「私の――勝ちですね」


 唯は、囁くように言った。

 改めて言葉で伝えられるまでもなかった。勝ち負けは明白。盤上に残る正直の白石は、たったの四つだけ。あとは一様に、真っ黒な石で埋め尽くされていた。


「も、もう一度……いいかな?」


 その惨敗を受け、正直が訊くと――


「ええ、もちろん」


 唯は静かに、それに応じる。


 唯の力量を軽んじ、油断したとの想いがあった。再度対戦すれば、同じ結果にはならない筈と……。

 しかし、そうして挑んだ二局目はおろか。その後の十局を超える対局の中で、正直は只の一度さら勝利を収めることは叶わなかった。

 それ程までに、実力差を示されてしまえば――


「まるで適わないよ。俺の完敗だ……」


 自然と頭をたれながら、素直にそれを認めるしかない。

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