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【マスクド彼女・序】
第3章 一日目【彼女との戒律(ルール)】

 唯の被っているマスクは、その表情のほとんどを隠していた。だが頭からすっぽりと全てを覆うものではなく、セミロングの頭髪はそのままにしている。マスクが固定されているのは、後頭部の髪の中で紐状の物が結ばれているものと思われた。

 だから視覚にてその表情を辛うじて窺えるのは、露出した口元のみ。これまでも正直は、微かな笑みを携えた唇を数回は見ている。今もそうだ。

 しかしながら、この時の唯の様子は明らかに愉しげ。それは何も、不器用な笑みを以ってそうだという訳ではない。彼女の有する雰囲気が、そう感じさせていた。

 正直は、それを良い兆候だと思う。

 オセロの対局を通じて、その性格の歪みに呆れはしている。それでも今は、もっと愉しんで欲しかった。

 大体、性格がどうなど言及するのは、彼女がマスクをしている時点で無意味。唯の全ては謎に包み込まれたまま、未だ何も顕わにしてくれない。


 閉ざされているのなら、それを開きたいと、正直は願っていたのだ。

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