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【マスクド彼女・序】
第1章 プロローグ
『マスク』――とは語ったが、それは風邪や花粉の予防に用いる為の、ものではなく。
しかし『仮面』と表せばそれも違い、寧ろ『覆面』と呼称する方が妥当となろう。
で、あるのならば。最もイメージに足るのは、プロレスのマスクマンのそれだ。が、何処となく艶やかなデザインは、アメコミ映画に登場するの女性ヒーローのようでもあった。
ダークなトーンを基調としたオリジナルと思しきマスクは、口元とセミロングの黒髪を除き、その人物の表情を包み隠している。
だが、この段階に至り。青年にとって、マスクの形状云々はどうでもよいこと。否、其処に興味を抱く程の胆力を、青年は持ち合わせていなかった。
だから――
「あ、あの、では――俺は、これで!」
青年はしどろもどろにそう告げて、玄関へと走り出す。その怪しさに負けて、逃げ出そうとしているのだ。