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【マスクド彼女・序】
第1章 プロローグ
逃走の理由は、述べる程のものではなかろう。
青年を此処へ迎え入れたのが、真面な人物ではないのは最早、明白である。奇怪なマスクをしている時点に於いて、それを疑う余地はなかった。
しかし――
ピ――――ガシャ。
「は……?」
まるで自動車を施錠するのと同様。小さな電子音に反応し、玄関のドアの鍵がロック音を奏でた。
「な、何だよっ!」
青年がドアノブをガチャガチャと捻ろうとも、既にドアは硬く閉ざされた後――。
「無駄ですよ。その内鍵は、私にしか開くことはできません」
それを悪あがきとあざ笑うように。
マスクの女の声が、青年の背後から淡々と響いていた。