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【マスクド彼女・序】
第1章 プロローグ
閉じ込められた――。自由を奪われた――。
人がそんな感覚を抱く時があるのなら、それは誰にとっても例外なく気分の良いものではないのだろう。
それはこの時の青年にしても同じこと。だから踵を返し部屋に戻り、マスクの女をギロッと睨みつけると――青年は、言った。
「オイ――何の冗談だよ!」
「……」
マスクの女は、それに応えずに。その代わりにとして――
――ピ。
玄関のドアを遠隔ロックした操作と同様に、今度は室内の証明を煌々と照らしてみせた。
「うっ……!」
暗闇に慣れた青年の目に、飛び込んだのは異様な光景。
予想を超えて広いスペースを取り囲む壁には、色取り取りの植物が蔦のように絡まり張り巡らされていた。
否、しかしそれは生きた植物ではなくて――造花。様々な花を模して、それが雑然と部屋の壁中を占拠している。また床の上に魅かれた絨毯にあっても、その模様の中に幾多の花々が咲き乱れた。
それら色彩が如何に鮮やかであっても、何処か言い様もなく――禍々しい印象。