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【マスクド彼女・序】
第3章 一日目【彼女との戒律(ルール)】
ホッと胸を小さく撫で下ろしつつ、正直は唯に言う。
「流石にこれは、ラッキーすぎだよね?」
思わず相手を気遣いたくなる心情も、ある意味では無理もなかった。【♤K】をドローしたことではなく、それは寧ろ二択であった宣言に対してであろう。
仮に正直が『LOW』と口にしていたのなら、その時点に於いて逆に唯の二勝目が決定していた。【K】に対しては、全ての数字が『LOW』であったのだから……。
しかし結果的に、その二択を有利に運んだ正直の勝利は目前。このターンで三勝目を上げれば、唯の一枚の手札で逆転することは不可能となる。
「……」
唯は静かに、提示カードを見つめていた。
一体、二人のこの勝負にどれ程の意味があるのか。
単なる『質問』と『キス』。勝利の対価として互いが求めた条件は、敢えて言わばたったのそれだけ。特に大事な何かを失う訳でもなかった。少なくとも、他人から見ればそうだろう。
だが、二人は勝利を欲した。その結果に求める意味は、今の二人の胸の中にしかない。