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【マスクド彼女・序】
第3章 一日目【彼女との戒律(ルール)】

 暫くの沈黙の後――唯はじっと正直を見つめ、こう言った。


「一つ――確認をさせてください」


「確認?」


「ええ、この勝負のこと……。正直さんが勝てば、私は貴方の質問に答えます。嘘をつくことなく、それは貴方の名前と同じ……必ず『正直』に答えることを誓いましょう」


「あ、うん……それは、信じるよ」


「ありがとうございます。ですから、私が勝った場合――正直さんも、ちゃんと果たされるように――改めて約束して欲しいのです」


「ちゃんと果たすって……その……キス、を?」


「はい……。私はこの様に、マスクで顔を覆ってますから、念を押すまでもなく――それはすなわち『口づけ』となります」


「……!」


 その言葉を耳にすると、正直の視線が自然と向かったのは――唯の唇。

 あるがままの色目が不思議と、却って妙に艶っぽく感じられた。



 何故そんなことを今、とは思う。今更ながら、どうして『キス』なのか、とも。

 だが、決着は既に目前。


「ああ、わかった。約束するよ」


 正直はそう答えて、首を縦に振った。


 すると――


「安心いたしました」


 その時。また唯の纏う空気が、俄かにその色を変える。


 ニィ……と、笑みが戻った口元。その怪しさで場を支配すると、唯は残った一枚の手札を【♤K】の上へと重ねた。


 ――パサッ。




 【♡A】




「あっ!」


 思わず感嘆の声を上げたのは、正直。


 唯が出したのは、唯一条件にかなう【A】だった。



 正直 2win (残り手札0)

 唯  2win (残り手札0)


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