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【マスクド彼女・序】
第3章 一日目【彼女との戒律(ルール)】
意味もわからず唖然とする正直に、更に唯は言うのである。
「すなわち、正直さんはサタンの誘惑に、その身を委ねてしまったのです。ですから、この勝負は――正直さんの負け」
「だから! どうして、そうなる?」
この時点で正直が理解したのは、唯の言うサタンというのがジョーカーを指し示す、ということぐらいだった。
それを引いたことが何故、敗北と直結するのか。全く合点のいかない話だと、そう思っている。
しかし――ふっと小さなため息を吐いた唯は、続いてこう言うのだ。
「納得いただけないようなので、もっと端的な根拠を述べさせていただきます。正直さんがご自身で示したルールの中に、ジョーカーを想定したものは含まれていなかった――そうでしたね?」
「そ、それは、確かに……」
「つまり、それは正直さん側(サイド)の落ち度。判断のつかない今の状況を生み出してしまったこと。その責任を負うのは、少なくとも私の側(サイド)ではない筈ですが?」
うっ……!
先程の抽象的な話とは異なり、今、唯が話した内容は正しく正論である。
トランプにジョーカーが含まれるのは常識。その上、唯は「ババ抜きでも――」とそんな提案すらしていたのだ。急遽ルールを考えたとはいえ、それを失念したのは正直の怠惰であろう。
一切の抗弁の余地もなく、正直にはぐうの音も出せなかった。
その様子でその心中を察し、唯は再びそれを告げるのである。
「つまり、勝者は――この私です」