この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
【マスクド彼女・序】
第4章 二日目・三日目【微弱な引力の作用】
「……」
璃子は黙ったまま、それを告げた三嶋の顔を見つめていた。だが別に、驚き唖然とした訳ではない。本人は至極冷静に、何かを見極めようとしていたのだ。
その真っ直ぐな眼差しに晒され、根負けするかのように三嶋の口元がふっと笑みを零す。そのタイミングを待っていたかのように、璃子は怪訝そうな表情を浮かべ諭すように言った。
「その手の冗談は、遠慮したいものですね」
「ハハハ、ゴメン。気にしないでよ。これも挨拶みたいなもんだから」
三嶋は悪びれることなく、その様に軽く取り繕うのだが。
璃子は厳しい顔を、緩めようとはしていない。
「三嶋先輩が誰それ構わず、その様な態度を取るからいけないんですよ」
「え、なにが?」
「真矢先輩の話です。三嶋先輩の悪影響で、いつも一緒にいる真矢先輩まで、周囲から遊び人みたいに見られてしまうではないですか」
「いやっ……それは、ちょっと言いがかりじゃ」
「いいえ、正しい判断だと思います。真矢先輩は本来、もっと誠実な人ですから」
淀みのない璃子の言い様を前に――
「そ、そうかも……。これからは、気をつけるよ」
些か強引ながらも、説き伏せられてしまった格好の三嶋。