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【マスクド彼女・序】
第4章 二日目・三日目【微弱な引力の作用】

「……」


 璃子は黙ったまま、それを告げた三嶋の顔を見つめていた。だが別に、驚き唖然とした訳ではない。本人は至極冷静に、何かを見極めようとしていたのだ。

 その真っ直ぐな眼差しに晒され、根負けするかのように三嶋の口元がふっと笑みを零す。そのタイミングを待っていたかのように、璃子は怪訝そうな表情を浮かべ諭すように言った。


「その手の冗談は、遠慮したいものですね」


「ハハハ、ゴメン。気にしないでよ。これも挨拶みたいなもんだから」


 三嶋は悪びれることなく、その様に軽く取り繕うのだが。

 璃子は厳しい顔を、緩めようとはしていない。


「三嶋先輩が誰それ構わず、その様な態度を取るからいけないんですよ」


「え、なにが?」


「真矢先輩の話です。三嶋先輩の悪影響で、いつも一緒にいる真矢先輩まで、周囲から遊び人みたいに見られてしまうではないですか」


「いやっ……それは、ちょっと言いがかりじゃ」


「いいえ、正しい判断だと思います。真矢先輩は本来、もっと誠実な人ですから」


 淀みのない璃子の言い様を前に――


「そ、そうかも……。これからは、気をつけるよ」


 些か強引ながらも、説き伏せられてしまった格好の三嶋。

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