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【マスクド彼女・序】
第4章 二日目・三日目【微弱な引力の作用】
――カシャ!
二人の手より、ほぼ同時に放たれた駒が盤上で、その音を鳴らした。
この刹那にあって、既に勝負は決している――筈。
これはかくも単純なゲームなのだ。
後はその結果を、双方が正しく認識するのみである。
「……」
「えっと……?」
無言のままじっと盤上を見つめる唯へ、正直は恐る恐るそう声を発した。
盤上の駒は幾つかが重なり合うと、その表裏をはっきりとは顕わにしない。
一見すると黒の方が多いように見えたが、唯の言う『神判』とやらは果たして……?
「重なって、わからない駒は?」
「待ってください。今――改めます」
正直の疑問にそう答えた唯は、盤上にそっと手を伸ばす。
そうして至極、慎重な手つきにて。
一枚ずつ、駒の表した面を確認してゆく。
「……」
その様子を、固唾を呑んで見守る正直は――
一……二……三…………四……。
己を勝利へと導く黒字の駒を、内心でじっと数えていた。