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【マスクド彼女・序】
第4章 二日目・三日目【微弱な引力の作用】
正直はそれを――最初は単なるアダルトビデオなのだろうと思っていた。
画質は綺麗とは言い難いから、おそらく『盗撮モノ』とか『素人投稿モノ』とか、その手のカテゴリー。正直自身が特に詳しい訳でなくとも、ネット上に溢れ返っているエロ動画等で似たような映像は目にした経験程度はあった。
だから、とするのが適切か否かは、ともかくとしても。その映像を前にして正直に起こった感情の変化が、『興奮』と呼ぶものであったことは否めなかった。
それは思う、または考える、というのよりも早い。すなわち、『反応』。この場合は、正直の男の部分に血流が集中することで成り立つ――所謂、『勃起』だ。
此処へ来てより数日。その前は二週間にも渡る、大学の試験期間。禁欲生活の続いていた若く健康な身体を有した正直にしてみれば、それはとても当たり前の現象であろう。
「……」
テレビの画面は、ベッドで寝転んで眺めるのに調度いい位置だ。そして、その枕元にティシュの箱が置かれていることも、正直の目はその流れで確認している。
だから、これが単なるアダルトビデオであるのならば、正直は何も考えることなく、すべきことを終わらせていたのだろう。
しかし、ながら――
「……!?」
そこには拭い去れない、違和感が生じつつあった。