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【マスクド彼女・序】
第4章 二日目・三日目【微弱な引力の作用】
「えーい! いつまでも、イジイジしてられないよ!」
自らを鼓舞するように言い放ち、璃子は傍らに置いていたスマホを手に取る。そうして、そのチラシに記された番号を一気に入力すると、相手の対応を待った。
「……」
五度――六度――、と続くコール。それが積み重なる度に、否応なく緊張が高まってゆく。
そして――
『――はい』
そう、短く応じた声に、璃子の有していた緊迫感は頂点に達する。
それは、聞き覚えのある声。もしかしたら、と想定していた若い女性の声音。
ほんの数日前、自分との待ち合わせに正直は来なかった。その所在を心配してかけた正直への電話。それに応じていたのが、その声の主だった。
やっぱり……。
と思う反面、これからどう話を切り出せばいいのか、それが悩ましい。
『貴女は彼と――どの様な、ご関係なのです?』
前の通話で、そう問われたことが頭を過った。