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【マスクド彼女・序】
第4章 二日目・三日目【微弱な引力の作用】
そう思った理由は、相手が自分の名を承知しているから――では、ない。
現時点に於いて、自分より相手の方が正直に近しい――と、そう感じたから。
自らのその想いに気づくに際し、璃子の持ち前の負けん気が徐々に顔を覗かせてゆく。
スマホをキュッと握り直し、姿勢を正した璃子の表情が引き締まった。
「はい――改めまして。新垣璃子と申します。真矢正直さんには、大学のゼミの後輩として、大変お世話になっている者です」
『……』
電波の向こうの相手は、黙したままそれを聞いている。
その気配を俄かに感じつつ、璃子は言葉を続けた。
「この番号は、真矢先輩が所持されていたチラシで見知りました。突然のお電話で、失礼とは存じております。ですが――私は、先輩のことが心配なのです。とっても――だから」
『……』
「教えて欲しいのです。今、先輩は――どうして、おられますか?」
璃子は静かに、それを訊ねる。