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【マスクド彼女・序】
第4章 二日目・三日目【微弱な引力の作用】

 だが、璃子が真っ直ぐであるほどに、声の相手はその捉え処を見せようとしない。


『それでは、彼と――セックスをしたいと望みますか?』


「せっく――???」


 思わず息を呑むと、一瞬で頭の中が真っ白に帰した。

 璃子はおよそ覚えのないくらい、言葉を乱す。


「ななな、なに、言ってるんですっ! 私は只、先輩のことがっ、好きで! ああっ――何度も言わないでくださいよぉ……もう、信じられない!」


 顔が真っ赤に上気していた。

 璃子には、恋愛経験と呼べるものは皆無。それ自体を、焦りとして意識したことはない。何れ自分にもそんな時も来るのだろうと、心に留めていた。

 そして、大学で正直と出会っている。

 仄かなものを、感じた。けれど、それは正しく仄かである。静かに育みたいと思った。だから、相手が発した言葉など、遠すぎて想像することすら及びはしないのだった。

 そんな璃子をまるで突き放すように、電話の声は更にこう続ける。


『私はそれを望み、それを秘めて――彼とのエデンに、臨むのです』
 
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