この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
【マスクド彼女・序】
第4章 二日目・三日目【微弱な引力の作用】
だが、璃子が真っ直ぐであるほどに、声の相手はその捉え処を見せようとしない。
『それでは、彼と――セックスをしたいと望みますか?』
「せっく――???」
思わず息を呑むと、一瞬で頭の中が真っ白に帰した。
璃子はおよそ覚えのないくらい、言葉を乱す。
「ななな、なに、言ってるんですっ! 私は只、先輩のことがっ、好きで! ああっ――何度も言わないでくださいよぉ……もう、信じられない!」
顔が真っ赤に上気していた。
璃子には、恋愛経験と呼べるものは皆無。それ自体を、焦りとして意識したことはない。何れ自分にもそんな時も来るのだろうと、心に留めていた。
そして、大学で正直と出会っている。
仄かなものを、感じた。けれど、それは正しく仄かである。静かに育みたいと思った。だから、相手が発した言葉など、遠すぎて想像することすら及びはしないのだった。
そんな璃子をまるで突き放すように、電話の声は更にこう続ける。
『私はそれを望み、それを秘めて――彼とのエデンに、臨むのです』