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【マスクド彼女・序】
第4章 二日目・三日目【微弱な引力の作用】

    ※    ※

 明くる日――エデンの三日目。

 其処に姿を現した唯の様子は、明らかにいつもと違った。否、いつも以上に捉え処がなかった、とすべきだろうか……。

 正直はまるで中学生時代に逆戻りしたような、ピカピカの学生ズボンと下ろしたての白いカッターシャツという姿。それは昨夜、受け取った鍵で開けたチェストにて得た物であったが。流石にそれらを身に着けることには、些かの抵抗が生じていた。

 それでも一応その姿で現れたのは、それを見た唯が何らかの反応――或いはもしかしたら、少しでも喜ばしく思ってくれるのではと、そんな期待があったからだ。「似合わない」とからかわれるのなら、それでも良かった。

 だが――


「……」


 唯はそれに一瞥をくれたのかさえも、そのマスクが故に定かではない。正直とテーブルで向き合って座ると、長い時間を沈黙でやり過ごしていた。

 だから、堪らずにそれを破ったのは、正直の方である。


「あの……どうかしたの?」


 すると――


「いいえ――」


 唯はほんの小声で、そう発した後に。


「少しだけ、昔のことを思い浮べていました」


 呆然と宙を見つめたように、そんな言葉を置き渡した。

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