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【マスクド彼女・序】
第5章 四日目・五日目【表側の景色と裏側の闇】
「静音――お前?」
「どうか――勘違いなさらないでください。あの子に対する、自らの態度を改めようと、そんなつもりは一切ありませんから。私は只――」
そう言って思いつめたように、口を噤んだ静音は――暫し何かを想うようにして、それから兄に訊ねた。
「お兄様――あの子は、どう?」
そう差し向けられた切れ長の綺麗な瞳に焦りを感じたかのように、孝次郎は期せずして厳しい顔つきになる。
「どう、とは――どんな意味だ?」
兄と妹、その間の空気がピりッとした緊張を醸した。
「……」
「気になるなら、自分で顔を見てくればよかろう。まあ、もっとも『顔』は見せまいがな……」
冗談めかした言葉を、静音は敢えて冷たい表情でツンと受け流し。
「ですから、私は一向に。お兄様こそ、籠の中の小鳥を愛でるも、大概になさった方がよろしいかと存じますが」
「なっ、なにを人聞きの悪い――」
と、孝次郎は焦るを滲ませて、それを誤魔化すように咳払いを着く。そして――
「――俺は只、アレでも一応は身寄りだと思って、だな。ああ、いや――つまり、管理してやる必要があるだろうということだ。多大な財産を得たとはいえ、当人はあのように閉じこもったまま。しかも、未だ年端も行かぬ小娘――」
「十八に、なります」
「は?」
「あの子だって、いつまでも子供ではありませんから」
静音は兄を窘めるように、言った。