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【マスクド彼女・序】
第5章 四日目・五日目【表側の景色と裏側の闇】
問答の旗色が悪いと察してのものか。孝次郎は軽く息をつくと、一気にその話題を改めている。
「それにしても、静音。休みに入った途端に、こんな田舎に引き込んでいるようでは。お前の方も、相変わらずのようだな」
「何もご存知でないお兄様に、言われる筋合いなどございませんが……」
「ほら、そんな風に拗ねるのが、何よりの証拠だ。お前、どうしてピアノをやめたんだ? あれ程、打ち込んでいたというのに」
「あんなもの――お父様の顔色を窺っていただけに過ぎない。そのお父様が亡くなられた今、私にとってそれを続けることに、何ら意味を見出せるものではありません」
「まあ、それはいいがな。ならば、いっそ――気楽な学生という立場を、せいぜい愉しめばよかろうに。数年後には、お前だって――」
そう言いかけた言葉を遮り――
「それでしたら、先日――合コンというものに、参加して参りました」
静音はそう言って、その時の情景を脳裏に思い浮べていた。