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【マスクド彼女・序】
第2章 前日【楽園からの誘い】
 そんな気持ちを見透かすかのように、三嶋は冷笑を浮かべる。

「就活ねえ……」

「何だよ?」

「偉そうに言ってくれるけど、お前って実際、どのくらい真剣に考えてるわけ?」

「か、考えてるさ。当たり前じゃん。もう来年は、卒業だぜ」

「じゃあ、希望職種は? 就職課に顔出してる? 就職先は地元? それとも都内?」

 相次ぐ質問に、正直は怯んだ。

「こ、細かいことは、まだ……」

「つまり、何も考えてない――っと」

「う……」

 ぐうの音も出せない姿に、三嶋が「あーあ」といった雰囲気でため息を漏らすから。正直はムッとした顔で睨むと、せめてもの反論を試みた。

「だから試験も終わったし、これからだろ。夏は実家に戻って、とりあえずは地元の会社説明会を回る予定だし」

「へえ、そうなんだ。で、実家にはいつ帰るの?」

 そう問われた正直は、再び表情を曇らせる。

「いや、それが……ちょっと問題があって、だね」

「問題って、何だよ?」

「実は……今月、金欠でさ。つまり、田舎に帰る交通費も儘ならない状態な訳で……」

「ほぉ……それで」

 既に呆れている三嶋に対し、正直は両手を合わせると拝むように懇願した。

「三嶋、頼む! 金、貸して!」

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