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【マスクド彼女・序】
第2章 前日【楽園からの誘い】
「あ、あのさ」
「はい、何でしょう?」
「えっと……アレ? 俺、話そうとしたんだっけ……」
そんなの、知るかよ! と、思わず内心で自らをツッコむ。
妙に挙動不審な自分を誤魔化そうとして、適当な話題を振ろうとしたのだが、言葉が続かづに余計に気まずい空気を作ってしまう。
璃子に対しては、かなり意識過剰。爛れた大学生活の中で培った女子との会話スキルも、彼女の前ではまるで生かされないようだ。
そんな頭真っ白状態な正直に代わり、璃子がこの場の会話をリードする。
「あの、先輩。この夏季休業は、どのように過ごされる予定ですか?」
「え、ああ。やっぱ、主に就活になるのかな」
「あ、これは失礼しました。大学四年の夏――とんだ愚問でしたね」
「そ、そんなこと……ないけど」
そう風に言われてしまえば、まだ何もしてないに等しい正直の方が恐縮しきりだった。