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【マスクド彼女・序】
第2章 前日【楽園からの誘い】
今でこそ必要に迫られ『就活』なんて常套句を口にしてみるが、それだってまだ何ら実態はない。活動してないのだから、就職未活動と言う方が正しかった。
増してや昨年までの正直は、長期休暇となれば遊ぶことで頭の中は一杯。バイトはそれなりにはしていたが、其処で得た金も専らファッションアイテムや新機種のスマホ、そして概ね交遊費となり右から左へと消えていった。
これは言うまでもなく、璃子のように実家の家計を憂うような殊勝さは微塵も持ち合わせていない。
学生として――否、寧ろ人としての自覚と姿勢が、彼女とは雲泥の差なのであった。
そんなことを、今更ながら思い知ると――。
やっぱ、無理だよな……。
正直、正直は気が引ける想いである。璃子に寄せる密かな好意を、自ら否定せざるを得ないと感じている。
自分の浪費してきた三年余りを自分なりに悔いているのかもしれないが、言うまでもなく今更どうにもならぬことなのだ。