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【マスクド彼女・序】
第1章 プロローグ
「――!?」
開かれたドアのその先は、暗がり。どうやら照明は灯されてはおらず、通路から差し込んだ光で広々とした玄関の一角を確認するのがやっとだった。
「あの――」
青年は不安を募らせながら、頼りない声を上げる。中に居るであろう誰かに、伺いを立てるように。
すると――
「ドアを閉めて――そのまま、真っ直ぐに進んでください」
決して大きな声ではなく。しかし、その言葉は淡々と静寂の中で響いた。
同時に漂ったのは、その気配。身体に突き刺さるような鋭い視線を、青年は感じて止まない。
何か、ヤバそうだぞ……。
そう思っていたのに引き返さなかったことを、青年は後に後悔することになる。が、既に張り巡らされた巣の糸に、その身を捉われようとする直前であることに、この時は気がつけずにいた。
「し……失礼しまぁす」
緊張から若干――可笑しなイントネーションを奏で。青年は恐る恐ると、玄関より先に進んでいた。