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【マスクド彼女・序】
第1章 プロローグ
ドアを閉じると、暗がりの最中にも微かな光が灯っていることに気づく。それに導かれるようにして、青年は手で壁を伝うように奥へと進んだ。
やがて滑らかな手触りの壁は、角となり開け。青年が足を踏み入れていたのは、リビングダイニングというもの――らしく。
暗がりで視界が十分に確保できずとも、其処がとても広々としたスペースであることは感覚としてわかった。
「――!」
そして目にしたのは、趣のある一脚のアンティークのテーブル。天井からの弱い間接照明が、スポットライトさながらにそれを照らしている。
卓上には小型のパーテーションのような、仕切りが置かれ。黒のレースのような素材で、此方とテーブルの反対側とを隔てていた。
そのレースの向こうにボンヤリと浮かぶ――一つの人影。
「……」
つまり、それこそ自分が会うべき相手なのだろう。と、青年はそれを俄かに認識する。