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【マスクド彼女・序】
第2章 前日【楽園からの誘い】

「ふう……」


 調度到着した快速電車に飛び乗ると、正直は息をついた。この電車に乗ってしまえば、都心までのアクセスは二十分余り。

 新垣璃子とは、直接シネコンにて。待ち合わせ時刻は、午後八時だった。今はまだ六時を回ったばかりであるから、慌てる必要は皆無。否、寧ろ早く着き過ぎてしまう。

 つまり正直が慌てる理由は、他にあるのだ。


 そう、それは――『面接』。


 あの女が電話で告げた住所は、幸いにして璃子との待ち合わせ場所にも遠くない。正直は璃子と映画を観る前に、其処へ立ち寄ろうとしていた。


「百万……か」


 不意にポツリと呟かれたのは、女が提示した報酬。学生のバイト代としたら、それは破格であろう。

 だが別に――正直が『面接』に赴こうと決めたのは、その大金に釣られたからではなかった。

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