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【マスクド彼女・序】
第2章 前日【楽園からの誘い】
そんな空間と目の前のマスクの顔が、正直を威圧して止まない。圧倒して呑み込むように、彼女はじっと鎮座し佇んでいた。胸の中の真意を語ろうとも、せずに……。
そんな状況が尚もジリジリと、正直の時間を奪おうとしていた。
もちろん、何時までもそうはしていられない。
そう焦ると、正直は苛立ちのまま口を開いた。
「いい加減に、何とか言ってくれ! 俺には予定が――」
だが、その時――。
――――♪
「――!?」
突如として奏でられた音色が、正直の言葉を邪魔する。
その曲には、聞き覚えが――というのは、それも当然。鳴り始めていたのは、正直のスマホの着信音であった。
それを耳にして反射的に、ズボンのポケットを弄ろうとしたのだが――。
――ピ!
「えっ……?」
目の前の光景に、正直はギョッとする。
「はい――どなたでしょう?」
平然と通話を始めゆく――マスクの彼女。
その右手が握り締めるのは、紛れもなく正直のスマホなのであった。