この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
【マスクド彼女・序】
第2章 前日【楽園からの誘い】
そんな時――。
「――真矢正直、さん」
突如、口にされたのは――正直の氏名。提示した免許証にて、彼女はそれを知り得ているが……。
「はい――?」
呼ばれたことを不思議に想って、正直はそっと首を傾げた。
すると、彼女は言う。
「『真』実を貫く『矢』……偽りのない『正直』な心……。貴方の名前を……私はとても素敵だと……そう、思いました。およそ人を信じることをしない、私なのに……」
「えっ……ああ、それは、どうも」
「だから、私は貴方と共に……此処で、ほんの束の間。孤独を忘れてみようと、そんな風に……思っているのです」
「孤独を……忘れる?」
彼女はコクリと頷き――
「ええ――けれども、ほんのひと時で構いません。それが、二週間という――暇(いとま)」
そして、正直に訊ねた。
「その暇を、どうか私に――くださいませんか?」