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【マスクド彼女・序】
第2章 前日【楽園からの誘い】
 そう訊かれて、当面。正直が此処に留まることを決するまでに、交わした言葉は存外僅かであった。


「その前に――ちょっとだけ、訊いてもいい、かな?」


「どうぞ……」


「俺は、この部屋で二週間――何をしたら、いいの?」


「別に、何も……居て下されば、それで。そうすれば少なくとも、その間の私は……孤独ではないの、ですから」


「じゃ、じゃあ――もう一つだけ」


「はい……」


 そう応じた彼女に、正直は恐る恐る――訊ねた。


「君はどうして――そんなマスクを、しているの?」


「……」


 その問いを前に、彼女はじっと押し黙っている。

 だが返答を諦めかけた、その頃。正直の耳に、その言葉はひっそりと届いた。



「私の顔なんて……誰も、見たくはないの……だから」
 
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