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【マスクド彼女・序】
第2章 前日【楽園からの誘い】
「……」
その音は自虐を通り越して、何処か切なくもあり。彼女の只ならぬ想いの欠片を、正直に示した。
その最たるものは、言わば強烈なまでの――自己否定である。
そして、彼女は真に孤独なのかもしれない。彼女が口にした中にあって、それだけは確かなのだと、正直は実感していた。
だから――という訳ではない。それのみでは、理由として弱すぎるから。寧ろ一時の気の迷いとすべき。
すなわち――結果。
「わ、わかった……俺でよければ、此処で君と……過ごそう」
まるで何かに操られた如く、正直は応えると――
「約束ですから……ね」
彼女もそう言って――正直を縛っている。
ともかく、そうして――。
二人だけの奇妙な日々は、始まろうとしていたのだ。