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【マスクド彼女・序】
第2章 前日【楽園からの誘い】
※ ※
その夜――。
「俺は……一体、何してるんだ?」
正直は眠れない理不尽な時間を持て余すと、ベッドから起き上がった。
今より、ほんの一時間前のこと。
「今夜は、もう――お休みになって」
そう告げたマスクの彼女は、正直に個室を与えた。二人が出会った広間の手前にあったドアの奥。豪華なマンションのイメージとは異なり、その室内は広さも造りも調度ホテルの一室のようである。
只、ベッドだけは異様に大きく。それ故に却って、正直は寝心地が悪いのだと感じていた。
「……」
其処から抜け出すと、正直は中央より部屋の中を見渡す。
壁際に押しつけられたような、簡素なテーブルと椅子。小さ目なチェストと、平たいラックがそれぞれ一つ。ラックの上には一応、テレビが置かれている。が、それは既に試して、何も映らないことは確認していた。
時計は無いから時刻は知れないが、恐らく午後十時とか、それくらいの時間だろう。普段なら、眠るような時刻ではない。
そんな風に感じた時。
「あ、そうだ――!」
正直は結局、スマホを返してもらってないのだと気がついていた。