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【マスクド彼女・序】
第2章 前日【楽園からの誘い】
「ふふ……」
と思わず苦笑し、正直はテーブルの前の椅子に力なく腰を下ろした。
どうやら今は眠るより他に、時間を過ごす方法がなさそうである。が、眠くはない。というよりも、こんな状況にあればオチオチ眠る方が呑気すぎた。
しかし、呑気と言うのなら、正直は既に大概である。
あんな怪しいチラシに釣られ、見知らぬマンションを訪れただけならまだしも。剰え彼女の言うままに、現在は此の部屋にて『籠の中の鳥』となってしまった。
理不尽と思うなら、見た目は異様でも相手はか弱き女一人である。力を以って制すれば、この状況を脱することは幾らでも可能だった筈だ。
正直はそれをしない理由の一端に、彼女――マスクの彼女に対する、興味が生じていた点は否定できないのだろう。
そして、もう一点――。
「真矢正直さん……か」
正直は呆然として、自らの名を呟いてみた。