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【マスクド彼女・序】
第3章 一日目【彼女との戒律(ルール)】
 個室を出ると、細く短い通路がある。それは直ぐに広い通路に繋がり、左側が玄関、右側が広間(リビングダイニングらしき部屋)へと通じている。

 正直に与えられた部屋は、明らかに妙なレイアウトの上に存在しているかに思われ。後に増改築された、オプションのようなイメージだった。

 それが意味する処は、とりあえず気にしないにしても。何故彼女が、かくも豪華なマンションに住まうのかは、当初よりの疑問の一つである。

 ともかく、広間に赴いた正直は、其処でまた例のマスクと顔を合わせたのだ。マスクと顔を合わせる、との表現が妥当かどうかは知らないが、まだ正直は彼女の名前すら知らない。


 否――何も、知らなかった。



「――!?」


 機先を制するように、正直をギョッとさせたのは、その出で立ち――この場合は、件のマスクはさて置き、彼女の服装だった。


「おはようございます」


 彼女は床の上に三つ指をつくと、そっと頭を垂れる。


 その身に纏っているのは――セーラー服。


 そんな姿を見た故に、正直の第一声は挨拶を返すものとはならない。


 高校……というより、寧ろ……。


「君、もしかして――中学生、か?」


 抱いたイメージのままに、そう問うた時――。


 ニイ……。


 マスクの口元が、微かな笑みを携えた。

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