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【マスクド彼女・序】
第3章 一日目【彼女との戒律(ルール)】

 実際には彼女の淡々とした口調にて、雑多に語られたものである。


「以上となりますが、何かご質問は?」


 それ故に、そう問われた処で――


「いや……その……」


 正直が口籠ってしまうのも、無理もないことではあった。何より正直は昨夜の段階で既に、「此処で過ごす」との意思を彼女に告げてしまっている。

 その点ではあまりにも迂闊であることは、自覚済みだ。それなのに不思議と、今更それを反故にする気もなかった。

 百万円という金額は確かに魅力ではあったが、何もそれに釣られたという気持もない。大体、本当にそんな大金を受け取れるなどとは、信じてさえいなかった。

 飽くまで正直を従わせるものは、(彼女に対する)興味と約束に尽きる。

 だから、正直が口にしようとする質問も、其処に端を発するものだった。


 しかし、ながら――


 何者なのか? と、それを問うても、答えが得られないのは既に周知。

 目的や動機を質しても、それは同様のことのように思えた。だから――


「君の、名前は?」


 正直は自然と、その様に訊ねている。

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