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【マスクド彼女・序】
第3章 一日目【彼女との戒律(ルール)】
唯の示したルール(?)に従うのなら、正直が所在を許されているのは、『エデン』と『ロックングルーム』に限られている。だが食事の際は、キッチンへの出入りが可能となるとのことらしく。
「朝昼晩、それぞれ三十分。その間でしたら、ご自由に食事をしていただいて構いません」
唯はそう言って、くれているのだが……。
最新の調理設備でありながら、使用された形跡はおよそ皆無である。炊飯器やオーブン等の調理器具についても、それは同様。
大きな棚に貯蓄されている食料といったら、カップ麺やレトルト食品、それと数々の菓子類がその大半を占めている。巨大な冷蔵庫の中にはペットボトルがズラリと並び、生鮮食品は見当たらない。
調理するという概念は、およそ此処には存在していないようだった。
「俺、朝は食わない方だから」
「食べなくても、よろしいの、ですか?」
「うん……」
それは嘘ではなかったが、この有様に些か辟易したのもまた事実である。それと同時に、普段の彼女の生活がどの様なものなのか。正直は、ふと気になっていた。
「あのさ。唯……さんは、どうしてるの?」
「私のことは、気にしなくても結構ですから」
唯は投げやりに、言う。
「……?」
もしかして、機嫌を損ねたのだろうか。
正直は、やや顔を伏せたマスクの表情を窺った。