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【マスクド彼女・序】
第3章 一日目【彼女との戒律(ルール)】
朝食を諦めた正直と唯は、とりあえず『エデン』へと戻っている、が……。
「……」
「……」
その光景は、昨夜の面接時と全く同様である。テーブルで向かい合う二人は、会話もなく互いの顔を何となく眺めていた。
今、何時かな……?
気まずさに苛まれ、正直が気にかけたのは現在の時刻。「朝食」との言葉から午前中であるものとは思われたが、何せ此処からは外の景色を窺うことすら叶わない。カーテンは閉ざされ、室内には一定の照明のみが灯る。
まさか、このまま、ずっと……?
此処で過ごすことに、まだ然したる実感などない。それでも十四日間もの時間の長さが、正直の中で不意に大きな不安へと変わった。
ともかく、何か話そう。当面、正直にできることは、それしかなかった。
「あの、さ」
「はい……?」
「俺と居ても、退屈じゃない?」
さっきから黙ってしまった唯に、気を遣うように訊ねる。
「いいえ。今の処、一向に」
「なんで? 只、黙って座ってるだけなのに……」
意外な言葉を受け、正直は疑問に顔をしかめた。
すると――
「私にとって、貴方が居るという事実が、とても新鮮。ずっと、一人だったから」
何かを噛み締めるように、そう答えた。