この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
【マスクド彼女・序】
第3章 一日目【彼女との戒律(ルール)】
「ねえ、訊いてもいい、かな?」
正直は恐る恐る、唯の顔色を窺う。否、もちろん顔色とすべきものは判断できないが、それでも僅かな空気の揺らぎを察しようとした。
「答えられること、でしたら」
と、唯はコクリと頷く。
「今、一人と言ったけど、唯さんは――この部屋に、一人で暮らしているの?」
「ええ――もう、三年になります」
こんな豪華なマンションに、三年も前から一人暮らし?
正直は知らされた事実に、密かに驚く。最もそれは、本当に事実なのか。普通の場面で聞いた話なら、ハッキリ言って疑わしい限りだ。
しかし、この少女(という表現が正しいかは知れないが)は行動に於いても姿に於いても既に異様過ぎるから、却ってそのくらいの嘘は言わないのだと思えてしまう。
その様に感じた時、正直は深く思慮するより先に、こう訊ねてしまった。
「じゃあ、家族は?」
「……」
そして、口を噤んだ唯を見て、己が迂闊であることに気がつく。
「あ、ごめん」
「――何故?」
「いや、不躾だったかと、思って」
「別に……その様には。答えられないことには答えないと、そう申し上げた通り。それだけのことで、気を悪くした訳ではありません」
「そう……?」
再び会話が、途切れた。
彼女にどの様な事情があるのか。それを正直が聞きだすのは、やはり困難のようだ。