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【マスクド彼女・序】
第3章 一日目【彼女との戒律(ルール)】
 暫く待ち、今度は唯の方から口を開いた。


「私の話は、面白くありません――きっと。ですから、正直さんの話を、聞かせていただけたらと思いますが……?」


「まあ、いいけど……」


 何をするとも定まらぬまま不安定な時を過ごすのは、やはり苦痛。正直は提案を承知して、唯からの幾つかの質問に答えることにした。


「大学は、楽しいですか?」


「それなり、かな」


「では、今――幸せ?」


「え、うーん……それは、別に。特別なことじゃあないけど、悩みとかもあるし」


「悩みとは、どんな?」


「例えば……将来のこと、とか」


「正直さんが思い描く――将来、とは?」


「仕事して、結婚して、家族を――って、俺の話の方が、よっぽどつまらないね」


「いいえ」


 唯は首を振ったが、何より正直が自分で呆れている。そのくらい普通で稚拙なことしか、口にしてはいなかった。

 それでも唯は気にした風もなく、また改めて何かを聞こうとする。


「今、結婚――と、言いましたが」


「うん。あ、もちろん、予定はないけどね」


「では、今――好きな女性は、いますか?」



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