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【マスクド彼女・序】
第3章 一日目【彼女との戒律(ルール)】
「お前――何のつもりだっ!」
正直は一旦鎮まり却っていた感情を、一気に蘇らせた。
璃子からのメールを見られた、それもあろう。もっと言うのなら、璃子の心理を匂わせるその内容を知り、どうしようもなく焦れたのだ。
そのメールに、何も応えられていない自分に対して。
そして、それを得意げに伝えた唯の行動に、真っ直ぐな怒りを表している。
「それを、返せよ!」
正直は立ち上がり、大きく開いた掌を唯の目の前に差し出しつつ、言った。
「嫌です。というよりも、できません。それは、戒律(ルール)に反します」
だが、唯は昨夜と同様。頑なにそれを固持する。
「関係ない。ルールというのなら、それ以前に実社会のルールがある。それは、俺個人の携帯だ。お前が勝手に覗き見る権利はない」
「いいえ、違います。此処はエデン――外界の法規(ルール)こそ、何ら意味を有する処ではありません」
「そんなの、子供の飯事だろう。こんなことされてまで、それに付き合う理由はない!」
興奮の余りそう言い切った瞬間――唯の周囲の空気が、その色を変えた。
「……!」
どんよりとした重圧の最中、ひっそりと佇み、唯は言った。
「結局……貴方も……私を一人にしようと、言うのですか」