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【マスクド彼女・序】
第3章 一日目【彼女との戒律(ルール)】
思わず、ドキリとした。空調の利いた室内でありながら、背中にはヒンヤリとした汗が滲む。
相手は素顔も年齢も、その他諸々の謎に包み隠された――女。
何故、こんなにも動揺しているのか、正直にはわからなかった。
そして、この雰囲気の中で何と返すべきか。やはり、わからない。
下手なことを口にすれば、思わぬ深みに嵌る。そんな緊張感が、確かにあった。
「もしかして、それが……目的?」
「目的?」
「二人で過ごそうとしてる、この十四日間の――すなわち、意義」
「それは……」
唯は言葉を止め、そして――
「ウフフフ」
静かに、笑う。
「……?」
不思議そうにする正直に、唯は言った。
「どうか、焦らないでください。まだ時間は、たっぷりとありますから。只――」
「只――?」
「私は正直さんに、期待しているのですよ」
一体、何を……? と、思い。
しかし正直は、それを口にはしなかった。