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【マスクド彼女・序】
第3章 一日目【彼女との戒律(ルール)】
昨夜、自分から映画に誘ったことは、できれば知られたくなかった。その上で、正直がどうして来なかったのか、その辺りの事情を窺えたらと、璃子はそう思っている。
無論、三嶋が何かを承知している保証はないが……。
「昨日、学校でお会いしたのですが……真矢先輩、とてもお忙しいご様子だったのです。それで、何か事情でもあるのかと……」
事実とは異なることを口にしてるとはいえ、要点を得ない言葉に自分でも飽きれてしまう。およそ普段の明瞭な彼女のそれとは違っていた。
大体、どうしてそれが気になるのかと訊き返されてしまえば、困るのは璃子自身である。
だが当面、三嶋はその点に引っかかることなく、会話を前に進めてくれた。
『忙しい? 夏休みだし、そんな筈はないと思うけど。あ、そうそう。金欠だって言ってたから、バイトくらいはするのかもね』
「バイト……ですか?」
『うん、昨日も駅前で見かけて――そう言えば少し、急いでいた感じだったな。その時に、アイツ――バイトの求人らしきチラシを、落としていったんだ』
「そう、でしたか……」
そういうことなら――と、璃子は無理に納得しようとしてみるが、当然そう簡単なものとはなりそうもなかった。
すると――
『そんなに気になるなら、直接アイツに電話してみれば?』