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第13章 『心底』
あの後はみなみとみらいをゆっくりと散歩をして、のんびりと過ごせた。

普段の聖は、冗談も言い軽やかな会話は楽しみに繋がる。

会話の豊富な人だなと、最初から思っていた。

大人な男性と、一緒に過ごした事が無かったかのように思う。

過去になりつつある旦那だった男達は、どちらも年下だった。

自分の年頃も若かったせいか、年上に甘えられるくらいなら年下に甘えられた方がいいと姐御肌が抜けなかった。

でも今の38歳の年齢まで来て、色々な体験をした上では寄り掛かりたくもなった。

優しくされなかった訳ではないだろう、ただ情熱的に愛されたかった事を初めて知った。

愛して、愛して、追いかけ手に入らない愛情を追うのに疲れ果てたのだ。

二回の結婚、離婚、流産、鬱病。

幸せになりたいと、思うのは罪ではないとそう信じたかった。

もう、悲しく、苦しい思いは沢山だ。逃げて、逃げ切れるなら逃げ切ってしまいたかった。

全ての辛い事から。
世の中では、道を外れたと言われるのかもしれない。でも世界の掟を決めているのは人間だ。

私は私の幸せを手に入れる為に、私の魂を差し出してもやり切る事を誓った。

今の活動を誰にも邪魔させない、そして今度こそやり切ろうと…

流されず、自分自身を貫く事を。

強い言魂・ことだま・を沢山、手に入れて私は強くなれたのだろうか。

ぐっと手を引かれた。顔を上げると、信号が赤だった。

頭を撫でられた。上を見上げる。

「また、そないな顔。今は僕だけの、絢音。笑ってた方が福来たるや。」

はっとして、笑顔を作るとすぐにきりんの首が近付く。腰を引かれた。

唇はいつも温かかさが残った。日本にいるのに、海外気分だった。

信号待ちで、キスなど今までされたことがない。

エスコートもさりげなく結局、女性にモテるのだろうとそう思った。

今回は、純粋に嫉妬している自分に苦笑して手を握りしめ直した。

愛される安心感が、自分をこんなにも安定させるものだと知り今まで大分 肩に力を入れて生きたのだと知る。
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