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・辿りつく 先には・
第15章 『帰路』
朝はどんな時でもやって来て、二人をまた現実の世界へと戻す。辛い出来事を乗り越える為には、絶対的な愛と安心感が今の絢音を支える事になった。

帰ればまた、口論の日々は続くだろう。
何度、愛されたか分からない程に求められた。こんなに逝ってしまったのも始めてだし、何よりも絶対的な支配力を見せられ悔しいながらに抗えなかった自分を知る。

その支配こそが聖の愛情なのだと、今なら分かる。

支配により安心感を与え、服従する事で心も身体も繋ぎ止められる。

本当は二人共、とても臆病で互いが互いを離さない事によって安心感を得ているのだろうと思った。
呟きは漏れる。

「今だけは私の魔王でいて…少しでもこの人の哀しみが消えたらいいのに…」

顔に掛かる前髪を避けて、じっと顔を眺めた。

ゆっくりと魔王の眼が見開かれ、さらりと抱きしめられた。

キスの嵐が降る。身体が溶けてしまいそうだった。

仄かな炎は再び部屋を暖める程に、熱気を篭らせた。

このまま、二人の肉体が溶けてしまえばいいとそう思った。
痛みも哀しみもない世界へ行けたら…そう思ってる時に呟きが耳を掠めた。

「絢音が一緒に、死んでくれたらええなぁ…」

あまりの言葉に夢から、覚めて身を離した。

「今、なんて…」

「帰れば、また辛い日々や。絢音になら魂 取られてもええよ。」
この人の本気が いつも何処までなのかが分からない。

目は虚ろだが、まだ薬は飲んでいなかった。

「私の為に生きて。死ぬなんて言わないで…」

「でも、辛くてしんどくて時に思うわ。薬を飲んで寝て、このまま目が覚めんかったらええのにと。」

怖くてぎゅっと抱きしめた。はかなさが余りに魔王と違い過ぎて、辛い。

聖の背負う闇を、貰いこの人の心が本当の意味で救われ明るく笑えたらいいのにとそう思った。

全てを救える訳がないと、分かってはいた。ならばせめても気持ちを和らげてあげたかった。

愛する気持ちだけで、人を救いたかったのだから。
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