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・辿りつく 先には・
第19章 『絶対』
夜になり六時を過ぎた所で、漸く電話が鳴った。一日が長かった訳ではないが、
孤独感はやはり否めなかった。

「一日、終わったわ。一人のんびりを満喫出来た?」

「ありがとう、ゆっくりしたのは久しぶりだったかも。絵も描けたし。」

「それは帰ったら楽しみ、見せてな。」

「色鉛筆だけど…綺麗な仕上がりにはなったかな。お散歩も少し。」

「何にもないとこやったろ。田舎だから守山は…」

「私の住んでいた所はもっと田舎だったから。それに田んぼの風景は好きだから…都会がいい訳じゃないし。」

「僕は都会の方が楽しいかな。」

「人それぞれね、自然に飢えているだけだから。もうすぐ着く?お風呂が先?ご飯?」

「ご飯かな、お腹が減ったし。その前に絢音を食べるけど。」

「また、そんな事…朝もでしょう。準備をしておくから一度、切っても大丈夫?」

「大丈夫だよ、残り15分くらいかな。」

「ホント?じゃあ急がないと、パスタ茹でなくちゃ。」

「慌てなくて、ええよ。ゆっくりで。楽しみにしてる。」

「は~い、残り気をつけて帰ってね。」

「ありがとう。」

耳元にキスが落ちる。それにくすぐったさを感じなくなる、日は来るのだろうか。慌てなくていいよと言われたが、きちんと準備はしておきたい。

パスタを茹で始める、湯気がゆらりと立ち込め今の私の気持ちのようだなとそう思った。頭の中にもやが掛かっている気持ちがしてならない。

掻き混ぜながら、そのもやを払った。小さなテーブルにフォークを置き、サラダを置くともう何も置けそうになかった。
なのでサラダはお盆に乗せ、床に置きそこから取り分けする事にした。

茹で上がり、パスタをソースに絡めた所でチャイムが鳴り慌てて下に下りる。

ちょっと外を確認してから、ドアを開けた。いきなり開ける訳にはいかない。ましてや此処は聖の家だからだ。

するりと滑り混んで来た聖。

「おかえ…」

ただいまが微かに耳に聞こえたと同時に、唇は重なっていた。腰に手を掛けられ、ぐっと引き寄せられたまま空気を奪われる。
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