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第4章 『逢瀬』
「寝れなかったら、また後で 電話して。寝息を聞くまで、話してあげるから 大丈夫。」

「本当は私の役目、なのにね。明日の支度 チェックしてからお風呂に入ります~。駄目ならちょっと、甘えちゃうかもです。またね チャオ」

「いつでも甘えて、絢音は特別。 メルシー」

「もう、またそんな囁き 恥ずかしいからおしまい。じゃあ」

「あとで・・・」

電話と耳が熱かった。心臓と魂も。どうなるのだろうと、不安と期待が混じり合い 目眩がしそうだった。

とりあえず言った事をしようと、ベッドから起き上がった。

壁には明日、着て行くこの間の出来立ての新緑色の ワンピースが出番を待っている。

「全て 本当なの?それとも 全てが嘘? 貴方が近くて遠い… 」

囁きは静けさの部屋に吸い込まれた。

ワンピースだけが、絢音の心を優しくシフォンの軽さで包みこんでくれるようだった。

耳に小玉する、香りを感じたい。 それを思い出すと、ある一部分もジンと熱くなる感じがして 更に手を握りしめた。

女を忘れた訳ではなく、お休みしていたのだ。

何かを期待した訳ではないが、ワンピースの下には綺麗なレースのキャミソールを選んだ。

白と薄く淡いピンクの薔薇が、女に戻されて行く気持ちがしてならなかった。

どうしたいかは、きっと明日 分かるそう思い バスルームに立ち上がった。

部屋には絢音の揺らめきと、聖玲の見えざる冷微が残されていた。

明日の関東は、晴れ。桜が咲く季節。出会いは突然であり、それはいつしか必然へと変化する。

愛の始まりはいつも唐突で、切なさもそこには存在した。

絢音は切なさを常に知り、今までも生きてきた。

欲しいものは常に、永遠に変わることのない愛する心。

愛の中でしか、生きられないのを一番、自分自身が分かっていた。

だから結婚に、向いていなかった事も薄々 分かっていたのだ。

揺らめきの明日が来る。何もかもが 明日だ…
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