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第4章 『逢瀬』

｢今の先生は歳を召してるけど、いい先生だから助かってるよ。でもその先生より、効いてるのが絢音。ああ、早く逢いたいなぁ。｣

呟きが、くすぐったかった。もう、自分でもどうしていいか分からずお手上げだった。

いつもは、物凄いスピードで仕事をこなし 回りには社交的だよね等と言われながらも、実は恥ずかしがり屋なのを 言われれば言われる程 見せないように スマートになんでも熟して来てしまったからだ。

人付き合いが上手いように見えて、本当の自分をさらけ出すのが嫌で さらさらと上手く付き合いが出来るようにしてきただけだった。

だが一度、好きになってしまったり愛する気持ちが沸くと 猫が飼い主に 愛情を示すように、従順な部分はあるのを知っていた。

呟きは、自然と漏れた。

｢私も、逢いたい。色々な話しが、もっと沢山したい。｣

それに電話の向こうで、口旗に冷微を浮かべたＮ。

｢美しくお洒落をして来た、絢音を見たら 僕 我慢出来るかなぁ～ 心配。｣

それにくすりと、笑った。

｢じゃあ地味ぃ～な格好で、行きます。｣

｢それはそれでかな。絢音、君の香りを感じたいよ。微笑みを見たい、そして君がリアルな世界にいるのだって ちゃんと感じたいんだ。｣

ぞくりと又、何かが波打った。香りを感じたい？精神の世界を、揺さぶる言葉。体が熱い、胸が焼けて。それが何かを知っていて、今は首を振った。

｢確かにリアルに繋がるのが、本当に不思議。それはちょっとだけ、秘密の国のアリスに 似ている。アリスはワンダーランドに行ったけど、リアルな世界なのにワンダーランドがそこみたいに感じます。｣
｢確かにね、リアルだけど狭間の世界なんだと思うよ。時折、趣味趣向のオフ会に行くと 夢みたいに浮遊した時間になるから。現実的な話しなのに、そうじゃないみたいな。｣

｢チャットでの出会いは一度目、電話で二度目 声の出会いみたいな。三度の出会いまであるなんて、贅沢な気持ち。古くからの、友人に久しぶりに会うような そんな感じです。｣

｢そうそう、凄いそれに近いよ。知り合いになって、色々ともう内面からを 分かるからだろうね。不思議なツール。｣

｢私は初めてだから、得に。ああ、寝れるかなぁ 早く寝てねなんて言う私が寝れないかも。｣