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・辿りつく 先には・
第6章 『狭間』
ホテルに着くと、Nが全ての手続きをしてくれてしまった。ロビーの椅子で、その姿を目にする。

緑色の軽いブルゾンに、白いパンツ。春らしい装いは、この時期らしかった。

スマートになんでもこなせてしまうのに、まるで病気だとは思えない。でも自分もそうだった。普通に生活は出来る。

だから端から見ると、分からないのだ。
だからこそ、今日は移動だけでも疲れただろうなと考えていた。

キィカードを持って来る。それをさりげなく、ポケットに落としてしまった。

「何階?」

「六階や、会議は二時からだから 着替えたら出るよ。絢音はどうする?朝、早かったしちょっと休んでたら ええやん?」

ちょっと考えたが荷物の整理も、したかったし夕方まで近くを散策してみたかった。

「じゃあ、お言葉に甘えて。夜はお店、どうしますか?」

「行きたいとこがあったから、予約してみたよ。気に入ればいいんやけど。」

それに嬉しそうに、微笑みありがとうと礼を述べた。

「上に行く前にちょっとだけ、お化粧直しに行っていい?」

「ええよ、僕もちょっと行きたかったから。」

荷物は運んでおいて、貰えたので二人は化粧室へと向かった。

金曜の昼にチェック・インする人などはいなく廊下は静かだった。

「じゃあ 後で。出た此処で待ってるわ。」
それに頷くのかと思っていたら、ぐいっと腕を引かれた。何事がと考える間もなく、身障者用の広い化粧室に身を滑らされたのだ。

扉が閉まったと同時に、声が耳に小玉した。

「上までなんて、待てへん。」

胸を押して、抵抗しようとしたが力が敵うはずはなかった。
ぐっと腰を引き寄せられ、唇を奪われた。最初は優しく、次には深く。何度も唇から愛が洩れる。

吐息と、息遣いが静かな小さな部屋に響いた。

唇が焼ける、胸が焦がれた。魂に炎が燈され、頭が真っ白になりそうだった。

抵抗などはもう、出来る訳がない。

何度も、何度も唇は奪われ息すらも出来ない。むせ返る絢音。

「口を開けて、絢音。」

嫌と言う言葉は掻き消される。激しい情熱はこの、静かな人の何処から発っせられるのだろう。

朦朧とする、意識の中にそう思った。唇から侵入する舌が逃げる、絢音の舌を追う。

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