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・辿りつく 先には・
第6章 『狭間』
腰から下が砕けてしまいそうで、ずるりと落ちるとこを 股の間に足が入り止められた。

深い深い 長い長い 口付けだった。

何もかもを、守ってきた全てを一瞬にして奪われてしまった。

沢山 考えたことも、悩んだ事すらも 存在しないかのように。
Mの血が全身から、湧き出る気がしてNの腕を強く掴んだ。
潤んだ瞳で、見上げた絢音。言葉は耳に落ちる。

「口を開けるんや。僕を受け入れて、絢音。いい顔をしてる。」
まるで何かの呪文のように、操られた人形になった気持ちだった。口を開けると、Nが自分の唾液を流し絢音の口にそれを落とした。

それを飲みこまされる。儀式の様な、その行いに絢音は全身の血にNの体液が混ざり魂にまでそれが到達する気持ちだった。

逆らえるはずがないのだ、最初から分かっていた。

あの瞳が会った瞬間から、恐怖と愛が交じり合う。

「これで絢音は、もう僕の物だよ。僕の体液は君の身体に入った。 愛してるよ、絢音。」

どんなに どんなにその言葉が、今まで欲しかったか分かった。

身体中の血に、生命と言う名前の生きる力が溢れた気持ちがした。

胸に顔を埋める。こんなにも、悲しかったのだと知る。こんなにも寂しかったのだと知る。

長い長い間の孤独を、たった一言で拾い上げてしまった魔王。

もう、何もかもがどうでもいい気持ちになった。

色々な守って来た、大事な常識も 真面目でいたことも。

辛かった日々を救われてしまったのだ。
初めて、自分から抱きしめた絢音。見上げる瞳には涙があった。

「泣かないで、絢音。泣かしたいんやない。ただ、ただ 愛したいんや。ずっと、ずっと孤独だったから…」

ああ、この人も同じなのだと思った。

沢山の愛してくれる人がいても、愛し合う事でしか幸せになれない。

それを本当に知ってきたのだと、直感で思った。

「抱きしめて、そしてもう一度 キスをして。聖、私もずっとずっと寂しかった…」

抱きしめられた腕は、今度は炎ではなく漣だった。たおやかな海の波…

瞳を見つめられ、そっと愛しそうに唇に触れられた。
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