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第6章 『狭間』
「そやろ~気ぃ使ったんやで。」

「一緒にいたかったの間違いでしょう。」

ちょっと冗談めかして言ったつもりが、真顔で返された。

エレベーターで上がり部屋の前に着いた。

「出来るなら会議に参加なんかしないで、ずっと一緒にいたいねん。」

それに振り返り、子供をあやすように言った。

「それは駄目よ~お仕事はきちんとして下さいませ。」

キィを手からさっと抜いて部屋を開ける。

スーツケースを脇から入れた聖玲。

「それなりに広い~でもビルだらけ。夜は綺麗かも~」

「喜んで良かった。怒って、無理とか帰られたらどうするかなと考えてたよ。」

「そんなの口だけの癖に~」

それに微笑み後ろからそっと抱きしめられた。

立ち並ぶビルディングが眩しい。

「すっかり、リラックス出来そうやな。良かった。最初は凄い、緊張してそうやったから。」

見上げる顔は、女の顔だった。

「緊張はしますよ。初めてだもの、こんな出来事。」

「僕も緊張したよ。」

嘘と言う前にまた、唇が塞がれた。 目を閉じた絢音。今度は先程より、ドキドキが少し減ってくれていた。

ゆっくり目を開けると、眼鏡を取っていた事に気付く。

頬をひとなでしてから着ていたブルゾンを脱いだのを見て慌てた。が、着替える為だと気付いて 一喜一憂する自分に笑った。

ネクタイを出してあげて、見ると嬉しそうにして首を下ろした姿がやはりキリンに見えてならなかった。

「しめてくれたら嬉しいな、そうしたら4時間 頑張ってこれるかも。」

それにくすりと笑って ネクタイを結んだ。

何色にでもあうように、ブルーを選んでいた。

春先のグレーのスーツに、その色は映えた。

鏡の前で満更でもない顔をして、振り返った。スーツを見慣れていなかったからまたしてもドキドキしてしまう。

腕を広げられていた、行くべき?と思ったが そこは素直に従った。

「凄く気に入ったよ~色々あわせれそう。使わせて貰うね。 気遣いさせちゃって。」

「だってホテルのお金も 出すと話したのに。」

「大丈夫 半分は会社持ちだから さて下に行くんなら一緒に。」
最後に充電と言い 一度、力を込め抱きしめてくれた。
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